他人の信用を失い、他人を信用できなくなる

転職や失業はどんな理由があるにせよ、回数を重ねるほど他人の信用を失います。従業員がすぐにやめていく会社よりも、辞めていく従業員に対する風当たりの方が確実に強いのです。
 信用を失う、といえば少し漠然としていますが、要するにその人の能力や人柄がすべて否定されてしまうということです。失業者からすれば、それまで自分が勤めていた会社が自分に対して誠実ではなかったと反論したくもなるのですが、それは“負け犬の遠吠え”とかあるいはもっと辛辣に“問題解決能力が欠落している”などと評されてしまうのです。
 また、人格を否定されると言えば、私の場合はアルバイト先で上司が同僚に対して私が財布を盗む可能性があるから気をつけろと話していたそうです(私はそれを聞いてやめることにしました)。悔しくても対抗や反論をする方法がありませんでした。
 また、先ほども触れてきましたが、そうした評価は企業からだけではなく、周囲の人間からも受けることになります。もしも現在に密告による“魔女狩り”があったとしたら、私は真っ先に処刑される存在だと言えるでしょう。失業者は犯罪者と同様に扱われるものです。社会の人々が集団でヒステリックな心理状況に陥った場合には、そんな話も冗談ではなくなるかもしれません。
 こうした半面で、私自身もまた周囲の人々を信用できなくなっていくのが自覚されます。私はもともと友人の少ない方でしたが、失業生活をするなかでその友人とも絶縁状態になってしまいました。学生時代からの友人に自分の落?した姿を見られたくはないものです。しかし、そうした思いが相手に分かるはずもなく、結局ただ疎遠になってしまいました。
 人間は社会的な動物であるということを子どもの頃に学校で教えられましたが、失業者である私に残された“社会”はただ家族のみとなってしまいました。しかし、人間の忍耐力には限界があります。特に自分以外の者に対してはです。私に残されたこの小さな社会が瓦解するのも遠い日のことではないのかもしれません。そして、こうした私のメンタリティこそが表題の状態なのです。

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