家の外に出るのがためらわれる

これが実はもっとも辛いように私には感じられます。もともと家にこもるのはあまり好きではないので余計にそう思います。
 なぜ自宅から出にくいのかというと、それはご近所の“目”があるからです。たまに外に出ると近所の方からじろじろと見られます。そして、私が再び家に戻ると外からひそひそした話し声が聞こえてくるのです。
 こうしたことは一見すると神経衰弱の一症状、つまり過剰な自意識と幻聴といった症状ではないかと誤解されかねないものだとは思います。しかし、私の場合は、多少事実の誇張があるにせよ、そうではないと思います。
 というのは、私が生まれ育った実家に住んでいるからです。つまり、近所の方は私の同級生の家族だったりして私を子どもの頃から見知っている人たちなのです。私が貧乏で子どもを幼稚園に通わせていなかったり、どこかに旅行に出ることもなく、いつも家にいるらしいことはお見通しという訳です。人は歳を重ねるほどに権威には弱くなり、逆にそれを持たない者には軽蔑の目を向けるようになるのです。
 こうした近所の目は何よりも辛いです。腹が立つというよりも“恐い”と認識されます。
 それでも、失業した当初は体力の低下を防ごうとして近所のグラウンドで毎日軽くランニングなどをしていたのですが、段々とそうした目を感じるようになって外に出にくくなってしまい、結局辞めてしまいました。
 また、こうして実際に奇異の目にさらされると、次の段階として、こうした実情が私の心のなかで幾倍にもスケールが拡大されているということが自覚されます。つまり、いつどこに出掛けるにしても、見知らぬ人たちの間にいても、自分が失業者として常に奇異の目で見られているのではないかという“恐れ”を感じてしまうのです。その結果、夜間の外出さえもしにくくなってしまいました。今のところ、土曜日と日曜日は外に出るようにしていますが、そのうちそれもしがたく感じられるようになるのではないかと心配です。
 さらに言えば、こうした理由だけではなく金銭的な理由からも失業者は家の外に出にくくなります。

リンク